ホテル客室稼働率の目安と推移|稼働率を上げるための取り組み方も解説

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ホテル客室稼働率の目安と推移|稼働率を上げるための取り組み方も解説

ホテルの客室稼働率は、経営における重要な指標の1つです。

客室稼働率はホテルの売上高や収益に直結し、必要なスタッフの数など経営面に大きく影響します。

ここ数年、観光業界はコロナ過の影響を受けたため、ホテルの客室稼働率も大きく変動しており、基準となる目安を把握しておくことは重要です。

今回は観光庁のデータからホテルの客室稼働率の目安を紹介し、稼働率を上げるための取り組み方についても解説します。

 


コラムのポイント

  • コロナ過が明けた2023年以降、ホテル全体の平均客室稼働率は60%前後で推移しています。
  • 閑散期となる1~2月は50%前後、繁忙期である8月前後は60以上の客室稼働率が目安です。
  • ホテルの客室稼働率を上げるためには、競合との差別化やリピーターの獲得などさまざまな取り組みが必要です。

 

客室稼働率とは?

ホテルの客室稼働率のグラフ

客室稼働率は、ホテルの客室が稼働した割合を示す指標のことです。「OCC(Occupancy rate)」と表記されることもあります。

 

※客室稼働率の計算式

  • 客室稼働率=宿泊利用された客室数÷トータル客室数×100

 

客室稼働率は上記の計算式で求められます。仮に全100室のホテルで60室の稼働があった場合の客室稼働率は60%です。

客室稼働率が高いほど利用客が多く、低いほど空室が多い状態ということが分かります。

夏季休暇やゴールデンウイークなどのハイシーズンは客室稼働率が高くなり、オフシーズンは下がる傾向があります。

また、ホテルの経営状況をチェックする指標としては、次のようなものもあります。

 

客室平均単価(ADR)

稼働している客室1室あたりの平均販売単価

レヴパー(REVPAR)

販売可能な客室1室あたりの収益

 

安定した収益を上げるためには、客室稼働率と平均単価のバランスを取ることが重要です。

仮に客室稼働率が高くても、平均単価が低いと収益は上がりません。

客室稼働率を正確に把握することで、これらの指標も計算することができます。

 

平均客室稼働率の推移で目安をチェック

ホテルの平均客室稼働率のデータを基に、おおまかな目安をチェックしてみましょう。

ホテル全体の平均客室稼働率

ホテルの平均客室稼働率のグラフ

出典:観光庁 宿泊旅行統計調査を基に弊社作成

全国のホテルの年間平均客室稼働率は、コロナ過の影響を大きく受けた2020~2022年を除き、おおむね60%前後で推移しています。

2024年も、6月は58.5%、7月は61.8%と、平均稼働率は60%前後で安定しており、ホテル業界全体の目安と言えそうです。

 

ホテルの月別平均客室稼働率のグラフ

出典:観光庁 宿泊旅行統計調査を基に弊社作成

月別の平均客室稼働率は、コロナ過の影響が残る2022年と、回復基調にある2023年で開きがありますが、おおむね同じような傾向で変動しています。

コロナ過が明けた2023年のデータを見ると、閑散期である1~2月は50%前後、繁忙期となる8月以降は60%前後で推移しています。

業種別平均客室稼働率

客室稼働率の目安は、ホテルの業態やメインターゲットによっても変動します。

業種別の平均客室稼働率のデータから、目安をチェックしてみましょう。

 

 

リゾートホテル

ビジネスホテル

シティホテル

2009年

53.3

67.2

71.1

2010年

52.6

68.3

75.7

2011年

46.8

62.3

67.1

2012年

48.0

67.3

72.5

2013年

52.3

69.5

75.7

2014年

54.0

72.1

77.3

2015年

56.0

74.2

79.2

2016年

56.9

74.4

78.7

2017年

57.5

75.3

79.5

2018年

58.3

75.5

80.2

2019年

58.5

75.8

79.5

2020年

30.0

42.8

34.1

2021年

27.3

44.3

33.6

2022年

43.4

56.7

50.1

2023年

51.9

69.2

68.8

2024年(7月)

58.0

74.7

74.2

出典:観光庁 宿泊旅行統計調査

 

平均客室稼働率は、シティホテル>ビジネスホテル>リゾートホテルの順に高い傾向があります。

コロナ過の影響を大きく受けた2020~2022年は、シティホテル・リゾートホテルの下落幅が大きく、ビジネスホテルの稼働率が最も高くなっています。

観光利用が多いシティホテルやリゾートホテルは、景気や観光需要の動向を大きく受ける可能性が高そうです。

ビジネスホテルもコロナ過の影響を受けていますが、他の業態に比べると稼働率の変動率は少ない傾向がありますね。

なお、記事作成時点で最新の2024年7月の客室稼働率は、どの業態のホテルもコロナ過前の水準に回復しています。

地域別平均客室稼働率

ホテルの地域別平均客室稼働率のグラフ

出典:観光庁 宿泊旅行統計調査を基に弊社作成

ホテルの客室稼働率は、地域によっても目安に差があります。

都道府県別の平均客室稼働率の傾向をチェックしてみましょう。

 

地域平均客室稼働率(%)地域平均客室稼働率(%)
全国57.0三重県49.7
北海道57.5滋賀県56.2
青森県57.0京都府55.1
岩手県55.2大阪府67.2
宮城県58.3兵庫県55.2
秋田県46.2奈良県45.1
山形県48.2和歌山県40.6
福島県44.1鳥取県43.3
茨城県54.5島根県54.0
栃木県52.9岡山県57.2
群馬県49.9広島県62.2
埼玉県60.0山口県53.1
千葉県59.6徳島県53.4
東京都73.4香川県52.6
神奈川県58.6愛媛県56.1
新潟県43.6高知県53.7
富山県53.6福岡県64.8
石川県55.2佐賀県51.5
福井県44.6長崎県55.1
山梨県38.0熊本県59.5
長野県38.8大分県52.3
岐阜県48.0宮崎県48.7
静岡県49.9鹿児島県52.6
愛知県61.4沖縄県53.9

出典:観光庁 宿泊旅行統計調査

2023年の全国の平均客室稼働率は57%です。

都道府県別では、東京都(73.4%)・大阪府(67.2%)・福岡県(64.8%)など、有名な観光名所が多い大都市圏を中心に稼働率が高い傾向があります。

近年は外国人観光客のインバウンド需要が高まっており、国際空港があることも、稼働率の高さに影響している可能性がありそうです。

〈関連コラム〉

インバウンド需要で宿泊・観光業界はどう変わる?外国人観光客の動向と今後の対策を解説

 

一方、大都市圏から遠く、ターミナル駅や空港からのアクセスに時間がかかる都道府県は、客室稼働率が低い傾向があります。

平均客室稼働率が低いエリアでは、観光客を呼び込むための取り組みが重要になるでしょう。

客室稼働率を上げるための取り組み例

稼働率が高いリゾートホテルの客室

先ほどご紹介したように、客室稼働率はホテルの業態や時期によって変動しますが、なるべく安定した数字をキープすることが大切です。

客室稼働率を上げるための取り組み例をご紹介します。

トレンドを取り入れて競合と差別化する

より多くのユーザーに選んでもらい客室稼働率を高めるためには、観光・宿泊需要のトレンドを取り入れて競合と差別化することが大切です。

例えば、近年ブームが続いているサウナを導入することで、近隣ホテルとの差別化につながり、客室稼働率アップが期待できます。

サウナを導入する方法は複数あり、ホテルの規模や客室数に合わせて選ぶことができます。

詳しくはこちらのコラムもご覧ください。

〈関連コラム〉

ホテルにサウナを設置する方法と費用相場|見積もり・施工はどこに頼むべき?

 

施設の満足度を高めリピート率を高める

客室稼働率を上げるためには、新規顧客の獲得だけでなく、リピーターを増やすことも大切です。

リピート率が高いホテルは客室稼働率も高い傾向があり、新規顧客より獲得にかかるコストが低いため、利益率アップにもつながります。

リピーターを獲得するためには、ホテルの設備を充実させるなど、顧客満足度を高める必要があります。

前述したサウナの設置や、特定の趣味に特化するなど、リノベーションで顧客ニーズに合わせたホテルづくりを検討しましょう。

ホテルリノベーションのアイデアや考え方について、こちらのコラムで詳しく解説しています。

〈関連コラム〉

ホテルリノベーションのアイデア7選|リノベーション会社選びが重要

 

業務効率化や自動化を進める

客室稼働率が上がるとスタッフの負担が大きくなるため、業務効率化や自動化などを進めて準備しておくことも重要です。

ただ客室稼働率だけを上げると業務が忙しくなり、顧客対応や清掃などの質が低下して顧客満足度が低下するリスクがあります。

また、スタッフ1人当たりの負担が増加すると、労働環境の悪化によって離職率が高まる恐れもあります。

スマートチェックインやクラウド顧客管理など、自動化によってスタッフの負担を軽減し、その分サービスの質を高めることが可能です。

〈関連コラム〉

ホテル業界の課題と対策|インバウンド対応・老朽化・人材不足など

 

まとめ

客室稼働率はホテルの収益性に直結し、経営における重要な指標です。

季節や業態ごとの客室稼働率の目安を把握し、安定したホテル経営を目指しましょう。

ホテルの客室稼働率が平均より低い場合は、リノベーションなどの施策で魅力的な施設をつくることも検討してみてください。

 

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監修者情報

(株)秀建 編集部

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