(株)秀建 編集部
2024年ホテル業界の市場規模をデータでチェック|国内外の観光需要の動向は?
コロナ過を抜けたことでホテルを含めた宿泊業界全体は回復基調にあり、2024年も引き続き成長が期待できる状態です。
特に、2022年に水際対策が緩和され海外からの訪日外国人が増えたことが、国内の観光需要を回復させた一因となっており、インバウンド需要をつかむことが重要と言われています。
今回は、さまざまなデータを見ながら、2024年のホテル業界の動向について考えてみましょう。
コラムのポイント
- ・2024年の宿泊者数は日本人・外国人ともに伸びており、引き続き回復基調にあります。
- ・ホテルや旅館の施設数は、東京・大阪・沖縄を除き、ほぼ横ばいか微減している状況です。
- ・ホテルを含めた宿泊業界全体で人手不足が問題になっており、今後の重要な課題となる可能性があります。
ホテル業界の市場規模
2024年現在のホテル業界全体の市場規模について、さまざまなデータを見ながらチェックしていきましょう。
宿泊者数は国内・国外ともに伸びている
※観光庁 宿泊旅行統計調査を基に弊社作成
国内の宿泊施設の延べ宿泊者数は、コロナ過の影響を受け2020年に大きく減少しましたが、2022年以降は回復基調にあります。
観光庁によると、2024年2月の延べ宿泊者数は4,758万人で、新型コロナウイルスの影響を受ける前の2019年同月比9.9%と回復を続けています。
参照:観光庁 宿泊旅行統計調査(2024年2月・第2次速報、2024年3月・第1次速報)
※観光庁 宿泊旅行統計調査を基に弊社作成
延べ宿泊者数の内訳を見ると、日本人・外国人ともにコロナ前の水準まで回復していることが分かります。2022~2023年に実施された全国旅行支援事業、水際対策の緩和による外国人の受け入れなどの影響がありそうです。
2024年2月時点でも、日本人・外国人ともに2019年同月比を上回っており、引き続き順調に伸びている状況と言えるでしょう。
また、2024年以降は外国人の観光需要が重要と言われており、観光庁もインバウンド需要を回復するための取り組みを加速させています。国や地域全体での取り組みに合わせて、ホテル自体も外国人観光客への対応が求められる可能性が高いです。
観光庁:インバウンド回復戦略
客室稼働率は各業種ともに回復
※観光庁 宿泊旅行統計調査を基に弊社作成
宿泊施設の種類別に客室稼働率を見てみると、旅館・ホテルともに回復していることが分かります。まだコロナ前の2019年を超えてはいませんが、2024年2月速報でも前年同月比を上回っており、引き続き回復基調と言えるでしょう。
ホテル施設数は微減傾向
※厚生労働省 令和4年度衛生行政報告例を基に弊社作成
簡易宿泊所や下宿を除いた、ホテル・旅館の営業施設数は、ここ数年微減傾向にあります。
コロナ前の2019年をピークに、ここ数年で600軒以上のホテルや旅館が減少しています。
もう少し詳しく、都道府県別の傾向を見てみましょう。
| 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 |
全国 | 49502 | 51004 | 50703 | 50523 | 50321 |
北海道 | 2868 | 2863 | 2877 | 2951 | 2942 |
青森県 | 680 | 630 | 613 | 605 | 580 |
岩手県 | 817 | 811 | 792 | 787 | 774 |
宮城県 | 763 | 757 | 724 | 712 | 704 |
秋田県 | 547 | 545 | 523 | 515 | 507 |
山形県 | 816 | 807 | 790 | 774 | 757 |
福島県 | 1543 | 1521 | 1500 | 1477 | 1438 |
茨城県 | 953 | 941 | 925 | 925 | 893 |
栃木県 | 1412 | 1413 | 1412 | 1392 | 1398 |
群馬県 | 1184 | 1175 | 1171 | 1154 | 1144 |
埼玉県 | 688 | 689 | 691 | 688 | 691 |
千葉県 | 1307 | 1289 | 1268 | 1256 | 1234 |
東京都 | 2435 | 3308 | 3620 | 3654 | 3774 |
神奈川県 | 1341 | 1341 | 1349 | 1330 | 1299 |
新潟県 | 2112 | 2062 | 2020 | 1984 | 1952 |
富山県 | 426 | 418 | 390 | 374 | 374 |
石川県 | 753 | 743 | 738 | 741 | 733 |
福井県 | 973 | 949 | 932 | 909 | 900 |
山梨県 | 1328 | 1331 | 1327 | 1323 | 1330 |
長野県 | 2669 | 2620 | 2602 | 2585 | 2557 |
岐阜県 | 1110 | 1098 | 1095 | 1075 | 1073 |
静岡県 | 2928 | 2841 | 2760 | 2654 | 2571 |
愛知県 | 1191 | 1202 | 1221 | 1236 | 1214 |
三重県 | 1372 | 1293 | 1284 | 1285 | 1284 |
滋賀県 | 502 | 500 | 496 | 489 | 492 |
京都府 | 969 | 995 | 1017 | 1013 | 978 |
大阪府 | 1339 | 1477 | 1520 | 1558 | 1572 |
兵庫県 | 1507 | 1490 | 1475 | 1447 | 1433 |
奈良県 | 417 | 417 | 408 | 409 | 407 |
和歌山県 | 698 | 691 | 675 | 669 | 649 |
鳥取県 | 424 | 604 | 335 | 334 | 329 |
島根県 | 402 | 391 | 399 | 386 | 378 |
岡山県 | 684 | 695 | 683 | 681 | 664 |
広島県 | 696 | 701 | 730 | 713 | 729 |
山口県 | 708 | 692 | 623 | 609 | 598 |
徳島県 | 511 | 506 | 489 | 466 | 454 |
香川県 | 372 | 361 | 350 | 343 | 332 |
愛媛県 | 455 | 449 | 438 | 436 | 425 |
高知県 | 390 | 372 | 358 | 356 | 345 |
福岡県 | 1102 | 1294 | 1209 | 1186 | 1157 |
佐賀県 | 353 | 344 | 339 | 339 | 338 |
長崎県 | 597 | 612 | 608 | 614 | 623 |
熊本県 | 1200 | 1182 | 1039 | 1015 | 998 |
大分県 | 1165 | 1080 | 1025 | 1021 | 1018 |
宮崎県 | 455 | 444 | 425 | 413 | 408 |
鹿児島県 | 933 | 904 | 888 | 859 | 848 |
沖縄県 | 1407 | 2156 | 2550 | 2781 | 3023 |
※衛生行政報告例より抜粋
都道府県別に見ると、東京・大阪・沖縄を除くほかの地域は、横ばいまたは微減しているケースが多いようです。
ホテル業界全体では前向きな状態が続いていますが、地域によっては廃業する施設も多い状況です。
2024年以降は人材確保も重要な課題
ここまで見てきたように、ホテルや旅館を含めた宿泊業界全体は、2024年も引き続き好調な状態と言えそうです。
しかし、多くの業界で問題となっている人手不足は、ホテル業界においても例外ではありません。コロナ過で人材が流出した後、需要の回復に採用が追い付かず、人手不足に悩まされているホテルが多いのです。
厚生労働省の令和4年雇用動向調査によると、宿泊業・飲食サービス業の離職率は26.8%で、全産業の平均離職率15%を大きく上回っています。
ホテルの離職率が高いのは、24時間体制のため他の業種より従業員の負担が大きいことが原因と言われています。長時間労働や休みを取りにくい状況のホテルが多く、人手不足により労働環境の改善が難しいといった悪循環になるケースも。
また、国税庁が実施した令和4年民間給与実態統計調査によると、宿泊業,飲食サービス業の平均給与は268.2万円で、全業種の平均457.6万円を下回っていることも、新規採用が難しい一因と言われています。
このような状況を鑑みて、スマートフォンによる自動チェックイン・チェックアウト機を導入し、省人化によりスタッフの負担を軽減を図るなど、労働環境や待遇の改善を進めているホテルもあります。
観光需要を確実につかむためにも、スタッフの採用や環境整備にも力を入れていきましょう。
まとめ
2024年もホテル業界は需要が回復基調にあり、大きなチャンスが期待できる状況と言えそうです。
ただし、インバウンド需要をつかむ施設やサービスづくり、人手不足の解消など、取り組むべき問題もいくつか考えられます。
今後も市場動向や観光トレンドをチェックし、国内・国外からの需要を確実につかむためのホテルづくりを目指しましょう。
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