(株)秀建 編集部
【テナント】原状回復工事のポイント
賃貸物件でのテナント営業を辞める時や移転する時、『原状回復工事』をする必要があります。しかし、どこまで原状回復工事をしたら良いのか、どのくらい費用がかかるのかがわからなければ、計画を進めていくことが難しいですよね。また、契約書の確認や貸主との打ち合わせをしっかりしておかなければ、後々トラブルになる可能性もあります。
そこで今回は、原状回復工事の基礎知識や、工事を進めていく上で注意したいポイントをご紹介します。
コラムのポイント ・現在の状態から入居時の状態に戻すことを原状回復工事といいます。 工事内容や範囲、費用、誰がいくら払うのか、は契約内容によって異なります。 ・テナントの原状回復工事は、契約終了時までに終えることがほとんどです。必要な工事を終え、トラブルなく契約を終えるためにも、原状回復工事に取り掛かるタイミングには気をつけましょう。 ・契約時にオーナー側の意向をしっかりと確認しておく、こまめにコミュニケーションをとる、などできることをした上で、納得のいく原状回復工事を進めていきましょう。
− table of contents −
- ◼ 原状回復工事とは?
- ◼ 原状回復工事にかかる費用は?
- ・誰が払うのか
- ・いくら払うのか
- ◼ 原状回復工事の期間は?
- ◼ 原状回復工事のタイミングと注意点
- ・注意点① 準備は早めに!
- ・注意点② 契約内容を確認しておく
- ・注意点③ 見積もりを確認する
- ◼ 原状回復を意識した設計の選択
- ◼ トラブルのない原状回復工事を!
原状回復工事とは?
テナント運営をする場合、コンセプトに合わせてデザインを決めて内装工事を進めていくため、物件に大幅に手が加わっています。 厨房設備やガスの配管、水道管の移動、壁紙の張り替えや床材の張り替え、造り付け家具の設置、など様々な内装工事をすることは珍しくありません。これらの変更は、賃貸契約の終了時、借りた時と同じ状態に戻す必要があります。これが『原状回復工事』です。
原状回復工事については、国土交通省住宅局によりガイドラインが定められています。
原状回復をめぐるトラブルとガイドライン
https://www.mlit.go.jp/common/000991391.pdf
しかしこのガイドラインでは賃貸物件に関するものが多く記載されています。テナントとして利用する場合、使用目的によって消耗レベルが異なるため、建物の運営ルールごとに契約書を作成しその上で原状回復工事内容が決まります。
需要は増加傾向に
現在、多くのテナントが新型コロナウイルス感染症の影響を受け、原状回復工事の需要は増加しています。テナントを運営する以上は、いつかは原状回復工事をする日がやってきます。そのような現実にも目を向けた上で、必要な知識をつけておきましょう。
原状回復工事にかかる費用は?
原状回復工事にかかる費用は、契約内容によって『誰が』『いくら』払うのかが異なります。
誰が払うのか
誰が業者に内装工事を依頼するのか、誰が費用を払うのか、については契約内容によって異なります。そしてその工事内容は、『A工事』『B工事』『C工事』の大きく3つに分けられます。
A工事
A工事は、ビルの外装や屋上、トイレ、階段、エレベーターなど建物本体を工事する場合に適用するものです。業者への依頼から費用負担まで、すべてオーナー側の責任で行われます。
B工事
B工事は、空調設備や照明器具などテナント側の希望で変更を加えたり、移設や増設をしたりする場合に適応するものです。 費用はテナント側が払いますが、指定業者への依頼はオーナー側が行います。これには理由があり、建物の構造をよく知っている指定業者に原状回復工事を依頼することで、トラブルや事故を減らすことができるためです。
C工事
C工事は、新しくテナントに入居した際や内装のリニューアルなど、テナントの資産となる設備に対して工事を行う場合に適用するものです。全ての費用は、テナント側が負担します。
いくら払うのか
・10~30坪程度のテナント 坪単価約10~20万円(店舗)
・30坪以上のテナント 坪単価約8~15万円(店舗)
相場としては、このくらいの費用が一般的です。ただし、この金額はあくまでC工事範囲の価格。工事区分の契約内容はどうなっているのか、解体後の工事をどこまでやるのか、工事条件・期間はどうかなど、もちろん業態によって費用は大きく異なります。
B工事の場合、原状回復工事先の指定業者が全体費用の重要なポイントとなるケースも多いため、工事範囲の確認をした上で、指定業者の見積項目がB工事の範囲に間違いがないかをよく吟味しておきましょう。
また、前述したように新型コロナウイルス感染症の影響で、原状回復工事の需要は増加しています。しかし、原状回復工事をしたいテナントと、原状回復工事が出来る業者との需要と供給のバランスが取れていないため、工事価格が値上がりする影響が起き始めました。大型商業施設内の飲食テナントでのB・C工事が総額40万円/坪となったケースも出てきています。どのくらい費用がかかるのか?適正な価格を判断するためには、相見積もりをしっかりと取っていきたいです。
原状回復工事の期間は?
原状回復工事にかかる期間は、テナントの規模やどこまで工事をするのかという契約内容によって異なります。 小さなテナントで内装も手が込んでいない場合は1週間ほどで終わりますし、多くの間仕切り壁による個室をつくっている場合や、厨房を作り空調や諸設備なども大幅に変更している場合は、1ヶ月以上かかることもあります。しかし、最も留意するべきことは「工事条件」です。音出し・振動や臭気などの近隣対策、日中や夜間、平日や休日などの搬出入作業規制などにより、想定以上に工事期間がかかることが多くあります。
いろいろな規制がかかることを想定した上で、早めに相談、打ち合わせを進めていくようにしましょう。
原状回復工事のタイミングと注意点
テナントの原状回復工事は、契約期間内に終えることが原則です。必要な工事を終え、トラブルなく契約を終えるためにも、原状回復工事に取り掛かるタイミングには注意が必要です。
注意点① 準備は早めに!
スムーズに工事が進めば良いのですが、途中トラブルが起きないとも言い切れません。もしトラブルが起こったとしても、契約期間内には原状回復工事終了に至るように、準備は早めにして予備日を設けるようにしましょう。 もし契約期間内に原状回復工事が完了しない場合、賃料がかかったりトラブルに発展したりする可能性もあります。無用なトラブルを避けるためにも、工事期間の予備日の設定は大切です。
注意点② 契約内容を確認しておく
原状回復工事は、借りた時の状態に戻すだけではありません。契約内容によっては、厨房設備や空調換気設備など借りた時にすでにあった設備も撤去して、スケルトン物件に戻す必要がある場合もあります。契約時にどのような契約をしたのか、どこまで工事が必要なのか、契約内容を確認しておきましょう。 また、想定している原状回復工事が、『A工事』『B工事』『C工事』のうちどの工事にあたるのかについても確認しておきましょう。A工事だと思っていたらC工事だった…となると、想定より大幅に費用も期間もかかってしまいます。契約内容だけでは不明なのであれば、オーナー側に確認を取るようにしましょう。特に店外の物も対象となることがありますので注意しましょう。外部共有サイン、空調室外機、排気ファン・ダクト、ガス給湯器などがそれにあたります。
注意点③ 見積もりを確認する
オーナー側が指定した業者が原状回復工事をする場合、見積もり内容をしっかりと確認しておきましょう。本来はA工事にあたるため支払う必要のない工事費用が、B工事として見積もりに含まれていた、など起こりえます。 普段から見積もり内容を見慣れていなければ、出された見積もり書の費用が妥当なのかどうかを判断するのは難しいもの。どのような理由でこの費用で見積もられているのかについては、きちんと確認しておきましょう。
原状回復を意識した設計の選択
店舗設計の段階で、原状回復を意識した設計仕様を選択しておくことで、後のトラブルや手間を避けることができます。
『つくりやすい素材=壊しやすい素材』とは限りません。環境にやさしい設計、建築を心がけることが、原状回復費用削減にもつながります。防水方法を検討したり、過剰な量のシンダーを打たないように床内部のポストフォームの入れ方を工夫したり、再利用可能な素材を採用したり、組み立て式の什器を多用したり、と事前に工夫しておくことで、大きな合理化を図ることができるのです。
まとめ
スムーズに店舗運営を進めていくためには、トラブルなく原状回復工事を進めていくことが大切です。 契約時にオーナー側の意向をしっかりと確認しておく、こまめにコミュニケーションをとる、などできることをした上で、納得のいく原状回復工事を進めていきましょう。
株式会社 秀建は、内装工事全般だけでなく、外構から躯体までの建築工事や電気・空調換気・給排水・温浴などの設備工事も熟練プロが対応しています。 また、建築は木造住宅から鉄骨・RC造に至るまで、内装は5坪の飲食店からリゾートホテルまで、自社で一貫した施工が可能となっているため、「建築」と「内装」などの二分された連絡・調整・依頼ロス等がありません。
施工のプロフェッショナルだからこそ、オーナー様やテナント様のニーズに合わせた原状回復工事を進めていくことができます。 原状回復工事を検討されているのであれば、工事内容や費用のご相談など、ぜひ一度ご相談ください。