(株)秀建 編集部
店舗エリア決めで用途地域が重要な理由|出店できる業種も解説
店舗開業のエリア決めでは商圏分析や周辺環境など検討することが多いですが、用途地域も重要な要素の一つです。
開業する店舗の規模や業種に適した用途地域を選ばないと、出店できなかったり建築制限を受けたりする可能性があります。
今回は用途地域の基本的な種類や内容から、飲食やクリニックなど業種別に出店できるエリアの例も解説します。
コラムのポイント
・業種によって出店できる用途地域は異なります。
・市街化調整区域など、用途地域以外に注意すべきことも解説します。
用途地域とは
その地域にどんな建物を建築できるのか定めたルールのことを用途地域と言います。
用途地域は住居系・商業系・工業系の3種類、合計13のエリアに分けられています。まずは基本的な内容をチェックしておきましょう。
住居系
住環境を優先する用途地域のグループで、住宅と学校・病院・老人ホームなど公共性の高い建物中心のエリアが多いです。大規模な店舗や商業施設は建てられない場所も多いですが、飲食や小売店など業種によって出店できる用途地域もあります。
第一種低層住居専用地域 | 低層住宅のための地域です。小規模なお店や事務所をかねた住宅や、小中学校などが建てられます。 |
第二種低層住居専用地域 | 主に低層住宅のための地域です。小中学校などのほか、150㎡までの一定のお店などが建てられます。 |
田園住居地域 | 農業と調和した低層住宅の環境を守るための地域です。住宅に加え、農産物の直売所などが建てられます。 |
第一種中高層住居専用地域 | 中高層住宅のための地域です。病院、大学、500㎡までの一定のお店などが建てられます。 |
第二種中高層住居専用地域 | 主に中高層住宅のための地域です。病院、大学などのほか、1,500㎡までの一定のお店や事務所など必要な利便施設が建てられます。 |
第一種住居地域 | 住居の環境を守るための地域です。3,000㎡までの店舗、事務所、ホテルなどは建てられます。 |
第二種住居地域 | 主に住居の環境を守るための地域です。店舗、事務所、ホテル、カラオケボックスなどは建てられます。 |
準住居地域 | 道路の沿道において、自動車関連施設などの立地と、これと調和した住居の環境を保護するための地域です。 |
参照:国土交通省
商業系
スーパーマーケットや商店街、百貨店や遊技場など、幅広い業種の店舗を出店できる用途地域グループです。
オフィスビルや高層マンションが集まるエリアでもあるため、集客面でも出店するメリットは大きいでしょう。
近隣商業地域 | まわりの住民が日用品の買物などをするための地域です。住宅や店舗のほかに小規模の工場も建てられます。 |
商業地域 | 銀行、映画館、飲食店、百貨店などが集まる地域です。住宅や小規模の工場も建てられます。 |
参照:国土交通省
工業系
工業専用地域を除いて、幅広い店舗を建てることができる用途地域です。
大規模な工場で働く人が出入りする地域なので、業種によってはビジネスチャンスも大きいでしょう。
準工業地域 | 主に軽工業の工場やサービス施設等が立地する地域です。危険性、環境悪化が大きい工場のほかは、ほとんど建てられます。 |
工業地域 | どんな工場でも建てられる地域です。住宅やお店は建てられますが、学校、病院、ホテルなどは建てられません。 |
工業専用地域 | 工場のための地域です。どんな工場でも建てられますが、住宅、お店、学校、病院、ホテルなどは建てられません。 |
参照:国土交通省
用途地域指定のない地域
上に挙げた13の用途地域は、すべての土地に設定されているわけではありません。
- 都市計画区域外
- 市街化調整区域
- 用途地区無指定地区
上記のようなエリアでは用途地域が設定されていない「無指定」の土地もあります。しかし無指定だからと言ってどんな建物でも勝手に建てて良いわけではないので要注意。
例えば市街化調整区域は都市化を抑制するためのエリアで、許可がないと建物を作れません。
用途地域の目的
都市部で用途地域が決められているのは、それぞれのエリアで生活環境や利便性を確保するためです。
制限なくどんな建物でも作れる街は、秩序が無く暮らしにくい環境になってしまいます。極端な例ですが、住宅地の真ん中に工場があったら騒音・臭い・日当たりなどの問題が発生しますよね。
このような問題が起こらないように、住宅・商業・工業でエリア分けをして、建物に制限を掛けているのです。
店舗エリア決めで用途地域が重要な理由
用途地域によって開業できる業種や店舗の規模が決められているため、エリア決めの際にチェックする必要があります。
用途地域をチェックせずテナントや土地を契約してしまうと、最悪営業許可が出ず店舗をオープンできなくなる可能性があります。
階数や床面積が制限される用途地域もあり、仮に許可が出たとしても予定していた規模の店舗を造れないケースも。
用途地域は自治体などが公表しているマップなどで確認できますので、出店地域検討の際必ず確認しましょう。
業種別:店舗が出店できる用途地域の例
飲食店
飲食店や喫茶店を開業できるのは次の用途地域です。住宅専用地域は階数や床面積に制限があるので注意しましょう。
- 第一種低層住居専用地域(兼用住宅・非住宅部分の床面積50㎡以下)
- 第二種低層住居専用地域(2階以下・床面積150㎡以下)
- 第一種中高層住居専用地域(2階以下・床面積500㎡以下)
- 第二種中高層住居専用地域(2階以下・床面積1500㎡以下)
- 田園住居地域(2階以下・床面積1500㎡以下、その地域の農産物を使用する場合は2階以下・床面積1500㎡以下)
- 第一種住居地域
- 第二種住居地域
- 準住居地域
- 近隣商業地域
- 商業地域
- 準工業地域
- 工業地域
深夜種類提供飲食店営業届が必要なバーや居酒屋、風俗営業1号許可が必要なキャバクラなどは次の用途地域にしか出店できません。
- 近隣商業地域
- 商業地域
- 準工業地域
- 工業地域
またキャバクラなどの社交飲食店は学校や病院の近くには出店できないといった規制もあるので注意が必要です。
オフィス
事務所やオフィスを出店できる用途地域は次の通りです。
- 第二種中高層住居専用地域(2階建以下・床面積1500㎡以下)
- 第一種住居地域(床面積3000㎡以下)
- 第二種住居地域
- 準住居地域
- 近隣商業地域
- 商業地域
- 準工業地域
- 工業地域
- 工業専用地域
オフィスの規模にもよりますが、住宅系の用途地域には出店できない、または制限が掛かることが多いので注意しましょう。
ビジネスと関係性の深い商業系・工業系の用途地域は、制限なくオフィスを出店できます。
クリニック
ベッド数19床以下のクリニックは、地域の条例などによる特例がなければ出店できない用途地域はありません。
ただし病院は次の用途地域には建築できないので注意が必要です。
- 第一種低層住居専用地域
- 第二種低層住居専用地域
- 田園住居地域
- 工業地域
- 工業専用地域
またクリニックは建築基準法以外の規制や基準もあるので、保健所などに事前相談する必要もあります。
サウナ
昨今出店ブームが続いているサウナは、営業形態によって出店できる用途地域が変わります。
銭湯併設のサウナなど「一般公衆浴場」に分類される施設は、公共性が高いとみなされすべての用途地域に出店できるのが特徴。
スーパー銭湯や個室サウナなどは「その他の公衆浴場」に分類されるため、次の用途地域に出店できます。
- 第一種低層住居専用地域(兼用住宅・非住宅部分の床面積50㎡以下)
- 第二種低層住居専用地域(2階以下・床面積150㎡以下)
- 第一種中高層住居専用地域(2階以下・床面積500㎡以下)
- 第二種中高層住居専用地域(2階以下・床面積1500㎡以下)
- 田園住居地域(2階以下・床面積1500㎡以下、その地域の農産物を使用する場合は2階以下・床面積1500㎡以下)
- 第一種住居地域
- 第二種住居地域
- 準住居地域
- 近隣商業地域
- 商業地域
- 準工業地域
- 工業地域
ただしサウナは公衆浴場法・消防法などの基準も満たさないとならないため、用途地域以外にも注意すべき点が多いです。
用途地域以外に注意すべきこと
業種やエリアによっては、用途地域以外の建築・出店制限がかけられていることもあるので要注意です。
例えば市街化調整区域には、公共性の高い温泉施設は建てられますが、商業施設のスーパー銭湯やサウナはつくれません。
また食品を扱う飲食店なら食品衛生法、サウナは消防法や公衆浴場法など、業種によって対応しなければならない法令も異なります。
しかし一般の方がすべてご自身でチェックするのは難しいため、出店エリア選びや物件探しの際は、建築と法令の知識を持った専門家のアドバイスを受けるのが望ましいです。
店舗・商業施設づくりのプロフェッショナル「秀建」では、出店候補の物件選びのサポートにも対応しています。
飲食・オフィス・サウナなど幅広いジャンルの施工実績がございますので、店舗づくりのことならなんでもお気軽にご相談ください。