(株)秀建 編集部
仮設工事とは?共通仮設と直接仮設の違い
建築工事の見積書に出てくる「仮設工事」。工事完了後は撤去されて目に見える形で残らないため、説明が難しい項目です。
今回は共通仮設・直接仮設など大まかな種類の違い、具体的な仮設工事の設備や作業内容などを具体的に解説します。
これから建築業界で活躍する方はもちろん、プロの方も見直してみると見積もりチェックや現場進行に役立つかもしれません。
コラムのポイント
・仮設工事の基本的な内容を把握して、見積書チェックに役立てましょう。
・仮設工事の大まかな費用相場や考え方を解説します。
仮設工事とは?
仮設工事とは、現場作業を安全かつ円滑に進めるために必要となる、仮設備や準備・清掃作業のことを指します。
仮設備は工事完了後撤去されますし、準備や清掃も建物を直接作る作業ではありませんが、どの現場においても欠かせない重要な項目です。
例えば工期が長期にわたる建築現場では、仮設トイレが無いと作業員が工事を中断して借りにいかなければいけません。結果的に作業効率が悪くなり、ムダな工事期間とコストが掛かってしまいます。
足場や仮囲いなどの仮設備も、現場の安全性や作業効率を担保するために欠かせません。
仮設工事の範囲や内容は会社によってまちまちですが、基本的な内容を押さえておくと見積もりチェックの際に役立ちます。
意外と知らない設備や作業もありますので、この後具体的にチェックしていきましょう。
共通仮設と直接仮設の違い
仮設工事は、共通仮設・直接仮設の2種類に大別されます。どんな違いがあるのか覚えておきましょう。
共通仮設工事とは
建物本体と直接関わりはないものの、現場全体をスムーズに進めるために必要になる項目が共通仮設工事です。
例えば敷地の測量や現場事務所の設置、仮囲いや安全標識など、準備や安全性の確保などが含まれます。
近隣住民への挨拶や騒音・事故防止など、円滑に現場を進めるために欠かせない項目も多いです。
直接仮設工事とは
建物づくりに直接関わる仮設備や仮作業を直接仮設工事と呼びます。
仮設足場や建物の養生、清掃などが直接仮設に含まれます。
建物を作るための作業との関係性が深いため、直接仮設の方がイメージしやすいかもしれません。
共通仮設と直接仮設の違い
同じ項目の仮設工事でも、内容によって共通仮設・直接仮設それぞれに振り分けられるケースもあります。養生を例に挙げてみましょう。
- 隣の家への粉塵を防ぐ養生→共通仮設
- 建物内部の床・壁の養生→直接仮設
粉塵や音が隣家に行かないよう防ぐ養生は、建築現場全体が対象なので共通仮設となります。
床や壁のキズや汚れを防ぐための養生は、建物だけが対象なので直接仮設です。
仮設工事の種類
水盛・遣り方
着工前に建物の正確な位置を出すため、基準となる目印を作る作業が水盛・遣り方です。
水盛は水平面の基準を出すことで、レーザー機器のない時代に水を使っていたのが名前の由来です。
遣り方は杭と貫板で作る仮設物のことで、「丁張り」と呼ばれることもあります。
建物を囲うように仮設置して、基礎の位置や高さなどを決める重要な基準となります。
仮設トイレ
仮設トイレは比較的大規模な土木・建設現場のイメージがあるかもしれませんが、ある程度工期が掛かる現場には欠かせない仮設備です。
新築・改築どちらでも基本的に現場のトイレは使えません。公衆トイレなどを借りられるケースもありますが、現場から遠いと作業効率が低下してしまいます。
2016年には国土交通省が建設現場に洋式水洗トイレの導入を義務付けるなど、重要度が高まってきています。
参照:国土交通省
仮設電気
多くの電動工具を使用する現代の建築現場では、仮設電気も重要度の高い仮設工事の一つです。
まだ電気が来ていない新築現場では、仮設電気が必要になります。現地に電源があっても、消費電力の大きい電動工具を複数使うとブレーカーが落ちてしまいます。スムーズに作業を進めるためには、やはり仮設電気が欠かせません。
仮設電気は近くの電柱から直接電線を引き込むケースと、エンジン式の発電機を設置するケースの2パターンがあります。
必要な電気容量が少なく工期も短い場合は発電機、長期間の現場では電線引き込みなど、状況によって適した仮設電気方法は異なります。
仮設水道
建築現場で使う水を供給する仮設水道も欠かせない仮設工事です。
モルタル・パテ・塗料などの建材、道具の洗浄など、建築現場で水が必要になるシーンは多いです。
まだ水道がない新築現場の場合は、仮設水道を申請しメーターや給水管を設置する必要があります。
現場の状況によっては仮設の排水や流し台などを設置するケースもあります。
現場事務所
工期が長い建築現場では、施工管理の拠点や現場作業員の休憩所となる現場事務所を設置するケースもあります。
現地にスペースがあればプレハブを設置することが多く、工具や資材置き場など用途の広い仮設備です。
敷地に余裕がない場合は、近隣の賃貸物件やマンションを借りて現場事務所にする方法もあります。
仮設足場
仮設足場は作業の効率性・安全性確保のために欠かせない仮設工事です。
建物の規模や作業状況によって、ビケ足場・枠組み足場などを使い分けます。
足場にキャスターが付いていて、移動させながら作業できるローリングタワーなども仮設足場の一種です。
足場は基本的にレンタルとなり、組み立て・解体も含めて専門業者に発注するケースが多いです。
仮囲い
建築現場の周囲にぐるりと設置する仮囲いには、さまざまな役割があります。
- 関係者以外の立ち入りを防ぐ
- 騒音の影響を減らす
- 粉塵や破片などが敷地外に出るのを防ぐ
- 景観悪化を防ぐ
- 資材や工具などの盗難を防ぐ
現場内外の安全性を確保し近隣トラブルのリスクを軽減するなど、仮囲いを設置する目的は多岐にわたります。
養生
足場に設置する養生ネットや建物を保護する養生材などが含まれる項目です。
養生ネットは作業中の落下物で周囲の人がケガするのを防いだり、作業者の落下事故を防いだりする役目を持っています。
建物内部の養生は搬入出や作業時にキズが付くのを防ぐためのもので、工事の種類や範囲を問わず必要になります。
墨出し
柱や壁、設備の位置を床や壁に表示する作業を墨出しと呼びます。
昔は墨つぼという道具を使っていたのが名前の由来で、現代ではレーザー機器などを使うことが多いです。
どんな作業も墨出しが基準になるため、非常に重要度の高い仮設作業と言えます。
廃材処分
解体廃材や加工で出る発生材の廃材処分費用も、仮設工事に含まれる項目です。
建築現場から出る廃材は産業廃棄物扱いとなり、種類ごとに処分方法が定められています。
不正処理には厳しい罰則が規定されているため、廃棄物処理法に則り正しく廃材を扱う必要があります。
清掃
現場の整理整頓や清掃作業も仮設工事に含まれます。
清掃が行き届いていない現場はキズや凹みなどが発生しやすくなり、作業効率も悪化してしまいます。
安全かつ効率的に現場を進めるため欠かせない項目と言えるでしょう。
運搬費
大型設備や重量のある建材、重機などの運搬費も仮設工事の一種です。
エレベーターが使えない人力荷揚げ、クレーンが必要な搬入現場などは、運搬費も多くかかる傾向があります。
警備
出入りする車両の誘導、周辺の交通整理など警備員が必要な現場は、人件費を仮設工事費として計上します。
資材の盗難や現場への侵入を防ぐための防犯カメラやセンサーライトなども、警備費に含まれます。
仮設工事費の目安
仮設工事費の目安は、全体工事の3~5%が一般的です。
ただし現場によって必要な仮設工事は変わるため、パーセンテージも変化します。大規模で長期間にわたる建築現場では、必要な仮設工事が多く費用も増えるケースがあります。
また会社によって仮設工事費の算出方法も異なり、一式・㎡単価・人工など見積もり項目のパターンもさまざまです。
全体工事費と仮設工事費の割合に注目しつつ、今回ご紹介した内訳もチェックしてみてください。
まとめ
仮設工事はどんな現場にも必ず必要になるものですから、内訳と費用のバランスをしっかりチェックしましょう。
ただし前述したように仮設工事費は会社によって考え方や表記が異なる場合も多く、適正かどうか判断するのが難しいです。
もし見積もりの仮設工事についてギモンや不明点があるなら、信頼できる専門家に相談してみてください。
私たち秀建は、店舗・商業施設づくりのプロフェッショナルとして、施工・お見積もりのご相談を受け付けています。
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