(株)秀建 編集部
ログハウス開業のメリット・デメリット|価格目安やメンテナンスを解説
趣味性の高い住宅のイメージがあるログハウスですが、店舗づくりとも相性が良く多くの業種で採用されています。
しかしログハウスにはたくさんのメリットがある一方、注意すべきデメリットや一般住宅とは異なるメンテナンス手間などもあります。良い部分だけを見てログハウスを建ててしまうと、大きな後悔につながりかねません。
今回はログハウスで開業するメリット・デメリット、建てた後のメンテナンスなどをチェックして、後悔のない選択ができるように準備しましょう。
コラムのポイント
・ログハウスはほかの建築にはない魅力やメリットがあり、店舗づくりとの相性も良いです。
・天然木ゆえのデメリットやメンテナンス性など、ログハウスの注意すべき点も踏まえて選択しましょう。
ログハウスとは?
ログ(LOG)は英語で丸太の意味で、切り出した丸太を組み合わせて作る建物のことをログハウスと呼びます。日本語では丸太組工法と呼ばれることもありますね。
ログハウスの発祥地については諸説ありますが、森林資源が豊富で寒冷な北米で発展した建築様式だと言われています。日本でも奈良時代の校倉造(あぜくらづくり)など似た構法がありますが、現在普及しているのは北米由来のログハウスです。
ログハウスといえば樹皮を剥いだ丸太を積み重ねるハンドカット工法のイメージが強いですが、最近は工場で製材した角材を使うマシンカット工法も選べます。丸太そのままの力強い仕上げから、ヨーロッパテイストの可愛らしいイメージまでデザインもさまざまです。
ログハウスのメリット
天然木による風合いと質感
木材を積み上げてつくるログハウスは、天然木の香りや仕上がり、肌触りなどを味わえるのが大きなメリットの一つ。
一般的な木造工法でも、室内に無垢材を貼れば似たような風合いは作れます。しかし構造自体が天然木のログハウスは独特の雰囲気があり、ナチュラルテイストが好きな方に根強い人気があります。
また天然木に含まれる「フィトンチッド」と呼ばれる成分を浴びると、森林浴と同じようなリラクゼーション効果が期待できるというデータも。
店舗づくりにおいても、ユーザーがリラックスできる環境は大きなメリットになるでしょう。
化学物質の少ない健康的な環境
接着剤などに含まれる化学物質が少ない室内環境を作れるのも、ログハウスの魅力ポイントです。
オーナー様ご自身やスタッフが、アレルギーやシックハウスなどの心配なく健康的に働ける環境をつくることができます。
また小さなお子様やペットと一緒のお客様も気兼ねなく利用しやすいため、店舗経営においては機会損失を減らすことにもつながります。
断熱性が高く省エネ効果が期待できる
熱伝導率が低い木材を壁面に使用するログハウスは、建物全体の断熱性が高くなり省エネ効果が期待できるのもメリット。
一般的な木造住宅のように断熱材を使用しなくても、厚みのあるログ材が断熱性を高めてくれます。
実際に寒さが厳しい北米や北欧でログハウスが普及していることも、断熱性の高さを物語っています。
耐震性・耐久性が高い
ログハウスは地震が発生した際、ログ材同士が揺れを吸収して制振装置のような役割を果たすため、耐震性が高いのも特徴です。
外壁・内壁ともに面材仕上げではないため、地震の揺れによる歪みで壁面が割れる心配もありません。
また適切なメンテナンスを実施すれば長く使える耐久性も、ログハウスのメリット。
実際にアメリカやカナダでは築100年以上のログハウスも存在しており、高い耐久性を裏付けています。
棚などをDIY造作しやすい
壁面・天井を無垢材で組み上げるログハウスは、ビスや釘を打てる場所が多いため後付けの棚などをDIY造作しやすいのも意外なメリット。
一般的な木造軸組み工法だと、柱が入っている場所以外にはビスや釘が利きません。ちょうど棚を付けたい場所に柱が無い場合、大工に下地補強してもらうケース必要があります。
しかしログハウスならほとんどの壁面や天井にビスや釘が効くので、オーナー様ご自身で手軽に棚やフックなどをDIY造作できます。
移築しやすい
これも意外なメリットですが、シンプルな構造のログハウスは移築しやすいのも特徴です。
一般的な木造軸組み工法の壁は柱・石膏ボード下地・クロス仕上げなど複雑な構造となっていて、解体して再組立てするのは困難です。一方ログハウスは木を積み上げるシンプルな構造なので、解体・再組立てが容易に行えるのです。
土地の変化に合わせて集客しやすいエリアに移築するなど、店舗経営と相性の良いメリットと言えるでしょう。
ログハウスのデメリット
無垢材のひび割れやすき間
天然木であるログ材は気温や湿度の変化で膨張伸縮を繰り返し、細かいひび割れやすき間が発生することがあります。
一つとして同じ模様のない無垢材の風合いはメリットである一方、工業製品のような精密さを求める方にとってはデメリットになり得ます。
実際に年数の経ったログハウスを観察して、無垢材のひび割れやすき間が許容できる範囲か確認するのが良いでしょう。
定期的なメンテナンスが必要
どの建物もメンテナンスは必要になりますが、無垢材で建てるログハウスは手間や費用が若干多めにかかるのもデメリットと言えます。
例えば、一般的なモルタル壁やサイディングの建物の塗装サイクルは10~15年が目安です。しかし無垢材のログハウスは、3~5年と短いサイクルで塗装が必要になります。
防火地域には建てられない
壁面仕上げが木材のログハウスは、防火地域に建てるのが難しいのも大きなデメリットです。
例えば東京23区内は全域が防火地域・準防火地域となっているため、ログハウスの住宅や店舗を建てるのは難しいです。
防火認定を取得しているログハウスで一定の条件をクリアすれば可能性はありますが、費用や手間が余計にかかるかもしれません。
丸太タイプはほこりが溜まりやすい
丸太を積み重ねた昔ながらのログハウスは、壁面の凹凸にほこりが溜まりやすいのも意外なデメリット。
特に人の出入りや動きが多い店舗だと、ホコリの量も多くなるため掃除の手間が増えるかもしれません。
建物の規模や用途によっては、ほこりが溜まりにくい角ログタイプを検討するのが良いでしょう。
ログハウスの価格目安
ログハウスの価格は材質や工法によって変化しますが、一般的には設備を除いて1坪あたり50~70万円が相場となります。
職人が手作業で組み上げるハンドカットログハウスは、坪単価100万円を超えることも珍しくありません。
しかし現在主流のマシンカットログハウスは、機械で効率的に加工できるため価格を抑えられます。
ログハウスで必要なメンテナンス
塗装
ログ材を雨風や紫外線から守るための塗装メンテナンスは、3~5年サイクルが目安です。
塗装を怠るとログ材が紫外線や雨でダメージを受け、腐食するなど重大なトラブルに発展する可能性があります。
天然木であるログ材は膨張伸縮する特性があり、表面に膜を張るタイプではなく浸透するタイプの塗料を使用します。そのため、一般的な木造建築のモルタル壁・サイディングと比べるとメンテナンスサイクルは短めです。しかしログハウスの美しい状態を長くキープし、トラブルを防止するためには欠かせないメンテナンスです。
すき間のコーキング
ログ材は年数が経つと反りや痩せによってすき間が発生するため、雨漏りを防止するコーキング処理も必要になります。
すき間を放置すると雨漏りの原因になり、ログ材が腐食するトラブルに発展する恐れも。
コーキングは塗装のタイミングで壁を点検し、すき間が発生しているようならメンテナンスするのが一般的です。
セトリング対策
天然木を積み上げるログハウスは年々壁が低くなる「セトリング」が発生するため、定期的に調整・メンテナンスをする必要があります。
特に新しい木材はセトリングが発生しやすく、新築後3年以内で全体の2~3%壁が沈むと言われています。
あらかじめドアや窓は調整できるように設置するのが基本ですが、定期的に点検や壁のボルト増し締めといった作業が必要です。
ログハウス開業のメリット
ログハウスの独特な風合いは、飲食や小売り、サービス業など幅広い業種と相性が良く競合との差別化に有利です。
外観・内装ともにインパクトのあるログハウスは、パンフレットやホームページでユーザーの目に留まる可能性が高くなるかもしれません。
天然木特有のリラックス作用や居心地の良い雰囲気は、滞在時間や客単価の増加などの効果も期待できるでしょう。
ログハウスは小型店舗にも対応でき、本場フィンランドのような本格サウナといったアイデアも実現しやすいです。
しっかりメンテナンスすれば長く使えるため、営業を続けるほどコストメリットも大きくなるでしょう。
まとめ
天然木による暖かでリラックスできる雰囲気のログハウスは、店舗づくりとの相性が良くメリットもたくさん。
メンテナンス性など注意すべきポイントはありますが、しっかり対策すれば一般的な木造建築より長く使うことも可能です。
飲食・小売り・サービス業など幅広い業種と相性が良いので、店舗開業の際はぜひログハウスも選択肢として検討してみてください。
私たち秀建は店舗・商業施設づくりのプロフェッショナルとして、ログハウス建築にも対応しています。
幅広い業種の店舗づくりをお手伝いしてきた実績がございますので、どんなこともお気軽にご相談ください。