(株)秀建 編集部
クリニックに必要な面積の考え方|20~40坪の内装費用相場も解説
クリニック開業にあたり、賃貸や取得する物件の面積や内装費用は、経営の成功に大きく関わる重要なポイントです。
しかし、診療科やコンセプトなど、さまざまな要素でクリニックに必要な面積や内装費用は変動するため、予測が難しいです。
そこで今回は、クリニックの広さを考える基本的な考え方、パターン別の内装費用相場を詳しく解説します。
どのようなクリニックにも共通の基本的なポイントを中心に解説しますので、ぜひ開業計画や物件選びの参考にしてください。
コラムのポイント
- ・クリニックに必要な面積は、診療科目や導入する設備などによって異なり、一律で考えるのは難しいです。
- ・【開業エリアを決める⇒売上高を決める⇒必要な患者数を計算する⇒広さを求める】クリニックの規模を決める考え方の順序をチェックしましょう。
クリニックに必要な面積とは?
まずはクリニックに必要な面積について考えてみましょう。
法律では、診察室9.9㎡以上、待合室3.3㎡以上と最低限の広さが規定されています。しかし、実際には受診する診療科や提供する医療内容によって必要な床面積は異なります。
診療科 | 必要な床面積の目安 |
内科 | 30~50坪 |
小児科 | 30~40坪 |
外科 | 50~70坪 |
耳鼻咽喉科 | 30~40坪 |
皮膚科 | 25~50坪 |
婦人科 | 35~45坪 |
上記は、クリニックの診療科別に必要とされる床面積の目安です。数字にかなり幅があるのは、受け入れる患者数や設置する機器によって必要な広さが異なるためです。
例えば一口に外科と言っても、整形外科と美容外科では、設置する機器や必要な面積はかなり違います。また、同じ診療科目でも、医師の人数や1日の患者数によってもクリニックの規模はさまざまです。
物件取得費や賃料相場が高い駅前エリアでは、上記の目安より小さな面積のクリニックも珍しくありません。逆に、お子様連れの患者さんのためのキッズスペースが必要な場合は、一般的なクリニックより広くする必要も考えられます。
まとめると、クリニックに必要な面積は、診療科目、立地環境、ターゲットユーザーなどさまざまな要素で変動するということです。クリニックの広さによって賃料や物件取得費用が変動し、経営の成功率にも大きく影響します。診療科の目安だけで広さを決め打ちするのではなく、順序だてて適切な面積を割り出す必要があります。
次の章で、クリニックに必要な面積の具体的な考え方をチェックしてみましょう。
クリニック面積の具体的な考え方
実際にクリニックの規模や面積を決める際は、次のステップで1つずつ必要な要素を確定させていくのがスムーズです。
- ①開業地域を絞り込む
- ②売上高を決めて必要な患者数を計算する
- ③必要な広さを求める
開業エリアを絞り込む
クリニックに必要な面積は開業するエリアによって大きく変動しますので、まずはある程度開業地域を絞り込みましょう。
開業エリアの考え方はさまざまですが、まずは人口に対して開業する診療科のクリニックが少ない場所を絞り込むのが基本です。具体的には、日本医師会の医療地域システムで人口に対する施設数の割合を検索するのが分かりやすいです。
参考:医療地域システム
エリア内の診療科目ごとの施設数、人口に対する割合を一覧で検索でき、ほかのエリアとの比較も可能です。競合が少ないエリアを選ぶことでスムーズな集患につながり、地域の医療を充実させることにもつながります。
売上高を決めて必要な患者数を計算する
開業エリアの検討がついたら、クリニックでつくりたい売上高を決め、どれくらいの患者数が必要なのか計算します。
厚生労働省が調査した、2022年度の個人経営診療所の1施設あたりの平均収益を参考にしてみましょう。入院診療を除いた、1年間の外来診療収益の平均は約8,889万円でした。単純計算すると1ヶ月あたり約740万円、1日あたり61万円の売上が必要になります。
売上高を決めたら、達成するために何人の患者が必要なのか計算します。
主たる診療科 | 外来患者1人1日あたり収益額 |
内科 | 8,337円 |
皮膚科 | 5,738円 |
小児科 | 8,470円 |
整形外科 | 5,499円 |
耳鼻咽喉科 | 5,210円 |
歯科 | 9,788円 |
出典:独立行政法人福祉医療機構 2020年度(令和2年度)病院・診療所の経営状況(速報)
内科で1日61万円の売上をつくるためには、「610,000÷8,337=73.16」の計算で約73人の患者が必要ということが分かります。
必要な床面積を考える
1日に必要な患者数が分かれば、クリニックに必要な床面積も具体的に考えやすくなります。
例えば1日6時間の診療時間で73人の患者を受診する場合、平均すると1時間あたり12.16人です。
このように細かく考えていくと、実際の診療シミュレーションが可能になり、待合室や診察室に必要な広さが見えやすくなるはずです。前述した必要な床面積の目安をベースにしつつ、受け入れる患者数に合わせて床面積を調整しましょう。
クリニックの床面積の目安が分かると、物件探しや内装費用の検討もつけやすくなります。次の章でパターン別の内装費用相場をチェックしていきましょう。
パターン別クリニック内装費用相場
クリニックの内装費用は診療科目やコンセプトによって変動しますが、70~100万円が相場です。広さ別に3つのパターンに分けて、費用相場を計算してみましょう。
テナントビル20坪 1,400~2,000万円
駅前など商圏人口が多いエリアでは、コンパクトなテナントビルでクリニックを開業するケースが多いです。20坪のテナントビルでクリニックを開業する場合の内装費用相場は1,400~2,000万円です。
ただし、テナントビルのクリニック開業は、電気容量や給排水設備などがハードルになることがあります。クリニック開業に向いていない物件を選ぶと、余計な費用がかかってしまうケースも。
クリニックテナント開業物件探しのポイントはこちらのコラムで詳しく解説しています。
〈関連コラム〉
医療モール30坪2,100~3,000万円
診療科が異なるクリニックが集まる医療モールは、患者にとって利便性が高く集患面で有利です。30坪の医療モールにかかる内装工事費用は、2,100~3,000万円が相場です。
医療モールはクリニック開業を前提に設計されているため、テナントビルのように電気・給排水などが問題になることは少ないでしょう。ただし、医療モール独自のルールで、外観や内装デザインが指定されるケースもあるので注意が必要です。
ロードサイド40坪 2,800~4,000万円
ロードサイド物件でのクリニック開業は、比較的広い面積を確保しやすいのがメリットです。40坪のロードサイド物件の内装工事費用は2,800~4,000万円が相場です。建物を新築する場合の建築費用相場は1坪当たり80~110万円で、40坪の内装工事費用と合わせると6,000~8,400万円となります。
ここでご紹介した金額は一般的な相場であり、実際は相場より安い坪単価を掲げる格安内装業者も存在します。しかし、表示価格が安い業者は別途工事が多く、実際に見積もりすると高額になってしまうケースも。クリニックの内装施工費用について詳しくはこちらのコラムもどうぞ。
〈関連コラム〉
クリニック内装の費用・坪単価相場は?格安内装工事のリスクと失敗しないコストダウンのポイント
クリニックに必要なスペース
クリニックの床面積やレイアウトを考える際は、どんなスペース必要になるのか把握しておくことも大切です。
- 受付
- 待合室
- 診察室
- 処置室
一般的なクリニックには上記のようなスペースが必要となります。患者やスタッフの人数、設置する機器に合わせてそれぞれのスペースに必要な面積を考えましょう。
また、診療科目によっては、別途手術室やカウンセリングルームが必要になるケースもあります。子供連れの患者さんが予想される地域では、キッズスペースも必要になるでしょう。クリニックのコンセプトに合わせて、必要となるスペースを1つずつ考えてみてください。
また、ロードサイド物件のクリニックでは、十分な広さの駐車場の確保や外構工事も重要な課題になります。駐車場が満車だと患者さんの不満が溜まり、口コミや評判が悪くなり集患が悪化する可能性があります。また、看板の設置や外構レイアウトで視認性を高めることも大切です。
まとめ
クリニックに必要な面積はさまざまな要素で変動するため、開業エリアや売上高など順を追って考えることが大切です。経営の規模やコンセプトに合わせて、ちょうど良い広さを割り出しましょう。
今回ご紹介したのは、クリニック開業の初期段階における基本的な考え方です。実際に開業計画を進める際は、クリニックの施工実績が多い会社に相談し、適切なアドバイスを受けましょう。
秀建は店舗・商業施設づくりのプロフェッショナルとして、多くのクリニック施工をサポートしてきました。クリニックのことなら、物件探し、内装工事のお見積もりなど、どんなこともお気軽にご相談ください。