(株)秀建 編集部
調剤薬局に必要な広さと内装施工費用|内装制限も解説
この記事では、調剤薬局に必要な広さや基準、内装施工費用の相場について解説します。
調剤薬局は厚生労働省による内装制限が設けられており、床面積やレイアウトなどの基準をクリアしないと開業できません。
また、調剤薬局はただ薬を受け取る場所ではなく役割も変化しつつあり、利用者のことを考えた内装・レイアウトも必要になります。
スムーズな動線や快適な待合スペースなど、利用者に選んでもらえる調剤薬局内装のポイントをチェックしておきましょう。
コラムのポイント
- ・調剤薬局に必要な広さやレイアウトは法律によって基準が設けられています。
- ・調剤薬局はただ薬を受け取る場所ではなく、かかりつけ薬局として地域のライフラインとしての役割を担うことが求められています。
- ・調剤薬局の内装施工費用は、コンセプトやレイアウトによって大きく変動します。
調剤薬局は開業のチャンス?
引用元:日本薬剤師会 医薬分業とは
今までの調剤薬局は「医院で処方された薬を受け取る」のがメインの役割でしたが、医薬分業の進展により、かかりつけ薬局としての役割が求められています。
最近はドラッグストアをはじめ、院内薬局・門前薬局以外の薬局に処方箋を持っていく患者さんが増えています。実際に、院外の調剤薬局で処方を受けた患者さんの数は年々増えており、2020年には74.9%を超えています。
例えば、通院先が複数ある場合、かかりつけ薬局を一か所に集約することで、飲み合わせについての相談ができるなど患者さんにとってメリットが大きいのです。また、処方された薬の飲み方だけでなく、健康相談や残薬管理など調剤薬局の役割が多様化することで需要増加が見込め、開業のチャンスも大きくなっています。
参照:「患者のための薬局ビジョン」~「門前」から「かかりつけ」、そして「地域」へ~ を策定しました
調剤薬局の内装施工費用相場
調剤薬局の内装費用は、建物の構造や延床面積、コンセプトや設備によって大きく変動します。
最低限の基準を満たす内装工事なら、1坪当たりの費用相場は20~30万円が目安です。ただし、延床面積が小さかったり、デザイン性にこだわったりすると坪単価は高くなります。
例えば、最近増えているおしゃれなカフェのようなデザインの調剤薬局をつくる場合、相場より多めに費用がかかるでしょう。患者さんが自由に調剤薬局を選ぶようになったことで、居心地の良い空間を提供する意義も大きくなっています。
また、お子様連れの方のためのキッズスペース、スロープや手すりなど、必要なスペース・設備によって内装施工費用は変動します。
さらに、調剤薬局は専用の什器類が必要で、価格が高い点にも注意が必要です。調剤室のレイアウトや広さによって、費用が大きく変動する可能性があります。
このように調剤薬局の内装費用は変動要素が多いため、坪単価で判断するのはあまりおすすめできません。安易に延床面積×坪単価で計算すると、見積もりで予算オーバーになり開業計画がスムーズに進まない可能性も考えられます。
調剤薬局の開業計画を立てる際は、早い段階で規模やコンセプトを決めて、なるべく精度の高い概算見積もりを取ることが大切です。
調剤薬局に必要な広さや内装制限
調剤薬局は、法律で内装や広さに関する制限が定められています。厚生労働省が管轄する「薬局等構造設備規則」の基準をいくつかピックアップして紹介します。
調剤薬局に必要な広さ
まず、調剤薬局の広さは次のように規定されています。
対象 | 広さの基準 |
調剤薬局全体 | おおむね19.8㎡以上で、薬局の業務を適切に行なうことができる |
調剤室 | 6.6㎡以上 |
調剤薬局全体の広さの基準は19.8㎡以上で、坪数にすると約6坪、畳に換算すると約12畳です。ほかの業種と比較すると、広さのハードルはかなり低いと言えるでしょう。ただしこれはあくまで最低限の広さであり、調剤薬局の業務を適切に行えるスペースが必要です。
また、調剤室の広さも6.6㎡以上と規定されていて、患者さんが誤って侵入しないように区分けすることが定められています。さらに、薬剤師が不在の時間帯は、調剤室を施錠・閉鎖できるようにする必要があるなど、細かい規定も設けられています。
法律の観点では、最低限の広さをクリアすれば調剤薬局を開業することは可能です。しかし、実際は1日に訪れる患者数を想定し、待合室や受付などのスペースも確保しなければなりません。
具体的には、つくりたい売上目標を決め、必要な患者数を計算し、十分に受け入れられる調剤薬局の広さを決めていくことになります。
調剤薬局の内装制限
広さ以外にも、調剤薬局には内装で守るべきルールが定められています。
※調剤薬局の内装制限
- 換気が十分であり、かつ清潔であること
- 天井及び床は板張り、コンクリート、またはこれらに準ずるものであること
- 医薬品を交付する場所は60lux(ルクス)以上、調剤台の上は120lux以上の明るさを有すること
- 鍵のかかる貯蔵設備を有すること
- 陳列設備から2メートル以内に患者が侵入できない措置が取られていること
- 調剤に必要な設備及び器具を備えていること
内装制限のうち主要なものだけでも上記のような項目があり、内装仕上げや照明など細かな基準が設けられています。
扱う薬品の種類によって、必要な設備や内装制限が変わるケースもあり、開業する調剤薬局に合わせた確認が必要です。
また、管轄する自治体によって基準や判断が異なるケースもあるので要注意。万が一基準を満たしていない部分があると保健所の検査で判断されると、薬局開設許可証の交付を受けられない可能性もあります。
スムーズかつ確実に調剤薬局を開業するためには、施工実績が豊富な会社を交えて、自治体や保健所と事前協議をして基準を確認することが大切です。
調剤薬局の内装で考えるべきポイント
調剤薬局の内装は、前述した最低限の広さや基準を満たすだけでなく、メインとなる診療科目や利用する患者さんに合わせてつくることが重要です。
例えば、耳鼻科の門前薬局の場合、花粉症のシーズンは待合室が混雑して座れなかったり長時間の待ち時間が発生したりする可能性が高いです。最低限の基準を満たしただけのレイアウトだと、患者さんの負担が大きくなり、継続して利用してもらえない可能性が考えられます。
待合室を広く取ったり、インターネット予約で待ち時間を解消したり、スムーズに利用するための工夫が必要です。
また、小児科の患者さんが多い調剤薬局は、キッズスペースが必要になるでしょう。整形外科なら手すりやスロープを設置するなど、メインとなる診療科目によって、適切な内装やレイアウトは異なります。
前述したように、これからの調剤薬局は「かかりつけ薬局」として地域のライフラインになることが求められています。コンセプトや内装を考える際は、常に患者さん目線を意識して選ばれる調剤薬局をつくりましょう。
まとめ
調剤薬局の開業では、法律による広さの基準や内装制限をしっかりクリアすることが大切です。さらに、訪れる患者さんに合わせたレイアウトや設備、内装デザインを考えるのも重要なポイント。
これからの調剤薬局はただ薬を受け渡しする場所ではなく、かかりつけ薬局として地域のライフラインとなることが求められています。なるべく計画の初期段階から、調剤薬局づくりのノウハウが豊富な会社に相談して適切なアドバイスを受けましょう。
調剤薬局づくりに関するご相談やお見積もりは、店舗・商業施設づくりのプロフェッショナル秀建にご相談ください。クリニックや調剤薬局の施工実績が多数ございますので、どのようなご相談にもお答えいたします。