(株)秀建 編集部
一棟貸し経営の始め方|必要な営業許可や施工事例も紹介
コロナ過から回復基調にある観光・宿泊業界では、一般的なホテルや旅館だけでなく、一棟貸し宿が注目を集めています。
貸切利用できる一棟貸し宿はユーザーにとって魅力的なだけでなく、経営者目線でもさまざまなメリットがあります。
この記事では、一棟貸し経営に必要な営業許可や具体的な始め方を詳しく解説し、実際の施工事例も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
※本記事の内容は2025年1月時点の情報を基に作成しています。
コラムのポイント
- 一棟貸し宿は一般的なホテルや旅館より経営の自由度が高く、ユーザーニーズに合わせて効率的に収益を得られるのがメリットです。
- 新築・リノベーションで一棟貸し宿をつくる方法を比較し、予算やコンセプトに合わせて選びましょう。
- ターゲットユーザーに合わせてコンセプトを明確にし、魅力的な施設やサービスをつくることが一棟貸し宿成功のポイントです。
一棟貸し宿とは?ホテル・旅館との違いをチェック
一棟貸し宿とは、文字通り宿泊施設を一棟丸ごと貸し出すことを指します。
昔から貸別荘やロッジなど一棟貸し宿はありましたが、近年は需要の高まりを受けてさまざまなビジネスモデルが登場しています。
まずは、一棟貸し宿と一般的なホテル・旅館の基本的な違いをチェックしておきましょう。
一棟貸し宿と一般的なホテル・旅館の違い
ビジネスモデルによって多少の違いはありますが、一棟貸し宿とホテル・旅館には次のような違いがあります。
| 一棟貸し宿 | ホテル・旅館 |
利用範囲 | 建物全体 | 客室と一部共用スペース |
設備 | 一般的な住居のように生活できる設備がそろう | ベッドやサニタリーなど最低限 |
自炊 | 可能 | 基本的にできない |
ほかの利用客との関わり | ほぼない | 客室以外では接触あり |
建物全体を丸ごと貸切利用できる一棟貸し宿は、ほかの利用客との関わりがほぼ無く、プライバシー性が高いことが大きな特徴です。
また、キッチンや電子レンジなど一般的な住居と同じような設備を備えていることも多く、利用客が自炊したり、屋外スペースでBBQをしたりできるのも人気のポイント。
旅先での非日常感を味わいながら、普段と同じような生活ができることから、家族や友人同士での長期宿泊に利用されるケースも多いです。
また、海外ではこのような一棟貸しスタイルの宿泊施設が多いことから、外国人観光客にも人気があります。
〈関連コラム〉
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一棟貸し経営のメリット
前述したように一棟貸し宿は一般的なホテルや旅館とはさまざまな点が異なり、経営面のメリットも複数あります。
休日や繁忙期だけ営業できる
一棟貸し宿は、閑散期や平日は営業せず、観光シーズンや休日のみ営業してコストパフォーマンスが高い経営ができるのがメリットです。
多くの客室やスタッフを抱えるホテルや旅館は、利益を確保する必要があるため営業日を絞るのは難しいでしょう。
一方、一棟貸し宿は最小限のスタッフや設備で運営できるため、利用率が低い時期は休業し、繁忙期だけ営業することも可能です。
省人化で運営コストを抑えられる
大規模なホテルや旅館と比較すると、一棟貸し宿は省人化を図りやすく、人件費をはじめとした運営コストを抑えて経営できるのも有利なポイントです。
前述したように繁忙期だけ営業できるため、スタッフを常時雇用しておく必要がなく、人件費を抑えられます。
ネット予約やスマートチェックインなどで省人化すれば、スタッフを雇用せずオーナー自身で運営することも可能です。
ニーズに合わせたコンセプトを調整しやすい
一棟貸し宿は、ホテルや旅館より初期費用を抑えやすいため、ユーザーニーズや観光トレンドに合わせてコンセプトを調整しやすいのもメリットです。
ホテルや旅館は客室数が多く、ロビーや大浴場なども大規模になるため、デザインやクオリティにこだわると初期費用が高額になり、経営面の負担になります。
一方、一棟貸し宿はクオリティを重視して設備やデザインに力を入れてもそれほど高額にならず、ニーズやトレンドの変化に合わせてリノベーションなどで対応しやすいです。
一棟貸し宿の開業に必要な営業許可は?
一棟貸し宿を開業する方法は大きく分けると民泊(住宅宿泊事業法)と、旅館・ホテル・簡易宿所(旅館業法)の2パターンあり、それぞれ必要な営業許可や申請方法が異なります。
| 民泊(住宅宿泊事業法) | 旅館・ホテル・簡易宿所(旅館業法) |
手続き方法 | 届出のみ | 許可を受ける |
住居専用地域での営業 | 可能 ※地域により条例による制限あり | 不可 |
営業日数の制限 | 年間180日以内 | なし |
参照:民泊制度ポータルサイト はじめに「民泊」とは・旅館業法について
住宅宿泊事業法(民泊新法)における民泊施設として開業する方法と、旅館業法における旅館・ホテル・簡易宿所として開業する方法には、主に上記のような違いがあります。
それぞれのパターンのメリット・デメリットを詳しく見ていきましょう。
民泊として開業(民泊新法)
住宅宿泊事業法の管轄である民泊施設として一棟貸し宿を開業する場合、届出のみで営業許可を受ける必要がないのがメリットです。
民泊施設の届出はオンライン上で完結するため、かなりハードルは低いです。
また、条例で制限されている地域を除き、住居専用地域で一棟貸し宿を開業できるのも大きなメリット。
一方、特区民泊を除いて営業日数が年間180日以内に制限されているため、通年営業で利益を高めたい場合は、後述する旅館業法での開業を検討した方が良いケースもあります。
旅館・ホテル・簡易宿所として開業(旅館業法)
旅館業法の管轄である旅館やホテル、簡易宿所として一棟貸し宿を開業する場合、所轄の保健所の営業許可を受ける必要があります。
旅館業法の基準を満たしたうえで立ち入り検査を受け、保健所の許可を得てから営業できるようになります。
申請から許可までにかかる期間は数週間でややハードルは高めですが、営業日数の制限がないため、高い収益性が期待できる立地なら旅館業法による開業の方が向いているでしょう。
旅館業法における旅館・ホテルと簡易宿所には、主に次のような基準の違いがあります。
| 簡易宿所 | 旅館・ホテル |
客室床面積 | 33㎡以上 (宿泊者の数を10人未満とする | 7m²以上/室 |
玄関帳場(フロント)の設置 | 原則不要 ※条例によって異なる | 必要 |
旅館・ホテルと簡易宿所は、客室の広さや玄関帳場(フロント)の設置基準が異なり、どちらが適しているかはケースバイケースです。
このほかに、一棟貸し宿としての営業許可については、自治体ごとに独自の基準が定められているケースもあるため、自治体との事前協議が必要です。
一棟貸し宿のつくり方
実際に一棟貸し宿をつくる方法としては、1からの新築と中古物件を購入してリノベーションの2パターンがあります。
それぞれのメリット・デメリットを把握しておきましょう。
新築する
1から一棟貸し宿を新築する方法は、コンセプトや事業規模に合わせて延床面積や間取りを調整しやすいのが大きなメリットです。
土地選びから建物のプランづくりまで自由度が高く、ユーザーニーズに合わせた魅力的な環境をつくりやすいのが特徴です。
広めの土地を購入して、複数の建物をつくり収益性を高めるといった選択もできます。
一方、立地や環境の良い土地は見つけるハードルが高く、建築費用も高額になるため、初期費用の負担は大きいのが新築のデメリット。
土地探しからプランづくり、工事期間などを考えると、開業までにかかる期間も長めです。
中古物件をリノベーションする
中古物件をフルリノベーションして一棟貸し宿をつくる方法は、費用や期間を抑えやすいのがメリットです。
更地が見つかりにくいエリアでも、中古物件なら見つけられるケースもあり、より収益性が高い一棟貸し宿をつくりやすいです。
また、既存の構造を活かすリノベーションは、新築より費用を抑えられる傾向があり、コストパフォーマンスが高い一棟貸し宿をつくれます。
中古の一軒家や古民家など選択肢も多く、既存の構造やデザインを活かし、魅力的な施設をつくりやすいのもメリット。
建物の状態には注意が必要ですが、物件をしっかり見極めれば費用を抑えてスピーディーに一棟貸し経営を始めることができます。
一棟貸し宿のリノベーション事例
実際に、中古の2階建て住宅をおしゃれな一棟貸し宿にリノベーションした施工事例をご紹介します。
北欧×和風をコンセプトに、木造住宅ならではの構造を活かしたおしゃれな一棟貸し宿に仕上げました。
寝室のデザインや雰囲気にこだわり、ホテルや旅館とは異なる宿泊体験ができる空間に。
広々とした浴室や個室サウナも、トレンドを取り入れ集客力を高めるアイデアの1つです。
こちらにほかの写真も掲載していますので、ぜひ一棟貸し宿のプランづくりの参考にしてください。
まとめ
観光需要の高まりを背景に注目を集めている一棟貸し宿は、宿泊業界の新たな選択肢になる可能性を持っています。
ユーザーのニーズにマッチするおしゃれで利便性の高い一棟貸し宿をつくれば、ホテルや旅館よりコストを抑えて効率的に経営することも可能です。
実際に一棟貸し宿づくりの実績が豊富な施工会社に相談し、観光トレンドを上手く取り入れながら集客力が高い施設をつくりましょう。
秀建は、店舗・商業施設づくりのプロフェッショナルとして培ったノウハウを活かし、ユーザーに取って魅力的な宿泊施設のプランをご提案しています。
これまで多くの宿泊施設づくりをサポートした実績がございますので、ぜひお気軽にご相談ください。